イサダ

【イサダ】

イサダは三陸地域での呼び名で、和名をツノナシオキアミといいます。名前のとおり、オキアミの一

種です。シロナガスクジラの主食として有名な、南極オキアミに比べると小さなオキアミで、体長は

1〜2cmです。水揚げされたイサダのほとんどは、養殖魚の餌やつり餌として用いられます。釣り具屋

やホームセンターで、釣りの撒き餌として、イサダのブロックが1kg数百円で販売されています。

水揚げ直後のイサダは鮮やかな桜色をしていますが、数時間経つと黒く変色してしまいます。また、

イサダの黒変を防ぐためには-30℃以下で保存する必要があります。この保存の難しさが、イサダの食品

利用を妨げる大きな原因の一つでした。

【イサダ漁】

三陸地域と常磐沿岸で4〜5万トンのイサダが水揚げされます。岩手県におけるイサダ漁は2月下旬から4月上旬に行われ、1万5千〜2万トン/年のイサダが水揚げされます。イサダの水揚げ量は岩手県水産物の中でも、上位にランキングされるのですが、利用用途が主に魚の餌であるために、価格が非常に安く、食品利用の促進や高付加価値化が求められている岩手県農林水産資源の一つです。

【イサダの機能性研究】

オキアミには、ドコサヘキサヘン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、アスタキサンチンが豊富に含まれており、南極オキアミの油(クリルオイル)は健康食品として販売されています。しかしながら、魚油(フィッシュオイル)と差別化できていないのが現状です。

1、イサダの機能性探索試験

イサダ特有の健康機能を探索すべく、水産技術センターと共同で、培養細胞を用いた機能性研究をスタートさせました。マクロファージ、がん細胞、筋芽細胞、肝細胞、脂肪前駆細胞などに対する、イサダの抽出成分の作用を解析し、脂肪細胞へのトリグリセリド蓄積を抑制する効果があることを見いだしました。(Yamada et al. PLoS ONE 2011

(謝辞:イサダの機能性探索試験は(公財)さんりく基金 平成22年度 課題解決研究の研究助成を受けて行われた研究です。)

2、イサダ成分の抗肥満効果

イサダ成分の肥満抑制効果について検討するため、岩手医科大学、岩手県水産技術センターと共同で動物試験を行いました。動物試験の結果、正常マウス(系統:C57BL6/J)に高脂肪餌(45% Fat Diet)を摂取させた場合の体重増加が、イサダ成分摂取によって抑制されました。さらに、イサダ成分摂取マウスでは、血漿レプチン濃度と肝臓トリグリセリドの低下、脂肪細胞の肥大抑制が観察されました。(Sadzuka et al. Biol. Pharm. Bull. 2013

(謝辞:イサダの機能性探索試験は(公財)さんりく基金 平成23年度 課題解決研究の研究助成を受けて行われた研究です。)

平成23年度研究トピックス_イサダ(ツノナシオキアミ)抽出成分による脂肪蓄積抑制作用

平成26年度研究トピックス_イサダ由来の新規抗肥満成分:8-HEPEの同定

平成27年度研究トピックス_イサダからの抗肥満効果がある新規機能性素材を開発

(文章:生物資源研究部・研究員・山田秀俊)